Excelファイルの共有を、USBメモリなどの物理メディアで頻繁に行うと、情報漏洩やデータ紛失のリスクが高まります。クラウドストレージを活用することで、そういったリスクを軽減し、場所を問わず効率的にデータ共有をすることが可能です。
本記事では、Excelファイルをクラウドストレージで共有する方法やメリット・デメリット、クラウドストレージの選び方に至るまでを詳しく解説していきます。また、おすすめのクラウドストレージも紹介しますので、自社のニーズに合ったクラウドサービスを選ぶ際の参考にしてください。
クラウドストレージとは?
クラウドストレージとは、インターネットを介してデータを保存し、どこからでもアクセスできるサービスです。
近年、多くの企業でリモートワークが普及したこともあり、クラウドストレージの需要は増加しています。
以下で、クラウドストレージについて詳しく解説していきます。
クラウドストレージの基本
クラウドストレージは、インターネットを通じてデータを保管・共有できるサービスです。ユーザーはインターネットに接続できる環境があれば、どこからでもデータにアクセスして編集や保存することができます。
データが保管されているデータセンターのサーバーは、高度なセキュリティと冗長性が確保されており、プロバイダーによって管理されています。そのため、ユーザーは設備投資や運用コストを削減できます。
クラウドストレージの主な機能
クラウドストレージの主な機能は以下の通りです。
- ファイルの保存と共有:ユーザーはクラウドにファイルを保存し、必要に応じて他のユーザーと共有することができます。
- バージョン管理::以前のバージョンを保持しているので、誤ってファイルを上書きしてしまっても復元が可能です。
- 高度なセキュリティ:データの暗号化やアクセス制御により、情報漏洩や不正アクセスを防止します。
- 自動バックアップ:保存されたデータは定期的に、または変更があるたびに自動でバックアップされます。
Excel(エクセル)の共有をクラウドで行う主な方法
Excelファイルの共有をクラウドで行う方法には、主に以下の3つがあります。
- クラウドストレージを使用する
- クラウドメールを使用する
- グループウェアを使用する
クラウドストレージを使用する
クラウドストレージを使用したExcelファイルの共有は、とてもシンプルで便利な方法です。
まず、クラウドストレージサービスを通じてExcelファイルをアップロードします。アップロードされたファイルは、生成された共有リンクを用いて、他のユーザーと共有することが可能です。
共有ファイルには、パスワードを設定したり、ユーザーごとに「閲覧のみ」「編集可能」といったアクセス制限を設定することができ、これにより安全性が高まります。
クラウドメールを使用する
クラウドメール(GmailやYahoo!メールなど)は、WEBブラウザ上でメールの送受信を行うもので、デバイスにメールソフトがインストールされていなくても利用できます。
メールにExcelファイルを添付して送信することは可能ですが、添付できるファイルサイズには制限があります。
また、クラウドメールでExcelファイルを共有する際には、誤送信や情報漏洩のリスクがあるため、細心の注意が必要です。
グループウェアを使用する
グループウェアはチーム内のコミュニケーションを円滑にし、業務効率の向上を促進するビジネスアプリケーションです。
チャットやビデオ会議、タスク管理といったコミュニケーション支援ツールが統合されており、Excelファイルなどの共有をすることもできます。
しかし、グループウェアを利用するには、ライセンス料などのコストが必要な場合があるうえ、共有相手も同じプラットフォームを使用している必要があります。
そのため、ファイル共有のみを目的にするのであれば、最適な手段とはいえません。
Excel(エクセル)をクラウドストレージで共有するメリット
Excelをクラウドストレージで共有することには、様々なメリットがあります。特に、リモートワークが普及してきた近年においては、その価値が一層高まっています。
以下で、Excelをクラウドストレージで共有する際の具体的なメリットについて解説していきます。
どこにいてもアクセスできる
クラウドストレージを利用する最大のメリットの一つは、どこにいてもファイルにアクセスできる点です。インターネットに接続できる環境があれば、自宅や出張先のホテル、または移動中でも重要なデータにリアルタイムでアクセスすることが可能です。さらに、Web版Excelを使用すれば、Excelをインストールしていないデバイスでも利用できます。
フォルダごと共有・連携できる
クラウドストレージでは、単一のファイルだけでなく、フォルダ単位での共有もできます。これにより、プロジェクトに関連するすべてのドキュメントを一つのフォルダにまとめ、チーム全員で共有することができます。
フォルダレベルでのアクセス権を管理することで、必要なメンバーだけがファイルを閲覧または編集することができるため、セキュリティを保ちつつ効率的な情報共有が実現します。
ファイルのサイズにとらわれない
Excelファイルが大量のデータや複雑なマクロを含む場合、ファイルサイズが大きくなってしまいます。このような大容量のファイルをメールで送信しようとすると、容量制限により送信できないことがことがあります。
一方で、クラウドストレージを利用すれば、大容量のファイルでも簡単にアップロードして共有できます。
ファイル共有の停止がいつでもできる
クラウドストレージを利用したファイル共有は、共有の停止も簡単に行えます。誤ってファイル共有をしてしまった場合や、プロジェクトが終了によりファイル共有が不要になった場合などには、すぐに共有設定を変更したりアクセス権限を完全に削除することが可能です。これにより、情報漏洩のリスクを最小限に抑えることができます。
編集権限を設定できる
クラウドストレージで共有するファイルには、編集権限を設定することができます。ファイルの所有者は他のユーザーに対して、ファイルを閲覧のみ可能にするか、編集を許可するかを選択できます。
さらに、編集権限の設定は共有するユーザーごとに行えるため、データの整合性とセキュリティを保つことが可能です。
災害や故障時にも安心できる
クラウドストレージサービスでは、データを複数の場所に分散して複製し、保管しています。そのため、一か所で障害や災害が発生しても、他の場所に保管されたデータを利用して迅速に復旧することが可能です。
さらに、クラウドプロバイダーは高度なセキュリティ対策を備えており、自動バックアップや最新技術に基づく定期的なアップデートを実施しています。このような体制によって、ユーザーは安心してサービスを利用できます。
共有相手の編集状況を把握しやすい
クラウドストレージでは、共有しているファイルの編集状況をリアルタイムで把握することができます。
クラウドサービスによっては、どのスタッフがファイルにアクセスし、どの部分を編集したかを詳細に追跡できるため、重複作業の防止や、タスクの進捗管理が簡単になるだけでなく、必要に応じてタイムリーなフィードバックも行えます。
また、編集履歴が残るため、過去のある時点のファイル状態に戻すことも容易であり、間違いや誤操作から生じるリスクを軽減できます。
ダウンロードの必要がない
クラウドストレージを利用したファイル共有では、ファイルをダウンロードする必要がありません。
ファイルをクラウド上で直接開いて作業することで、データのダウンロードやアップロードにかかる時間とリソースが削減されます。これにより作業効率が向上するだけでなく、データのセキュリティも保持され、不要なデータの複製を避けることができます。
費用が削減できる可能性がある
クラウドストレージを利用することで、物理サーバーの購入といった初期投資が不要となります。また、サーバーの管理はプロバイダーが担うため、運用コストも削減できます。
クラウドサービスは使用するデータ量に応じて料金が変動するので、不必要なリソースの割り当てを避けることが可能です。
Excel(エクセル)をクラウドストレージで共有するデメリット
クラウドストレージには多岐にわたるメリットがある一方で、いくつかのデメリットも存在します。
クラウドストレージを最大限に活用するには、デメリットを理解し、対策を講じることが重要です。
カスタマイズ性が柔軟でない場合がある
クラウドストレージサービスは汎用性が高く、多くのソリューションを提供しますが、特定のビジネスニーズや業界特有の要求に完全に対応する訳ではありません。例えば、企業が特有のワークフローやデータ処理をカスタマイズしようとした場合、多くのクラウドサービスでは固定された設定や機能により柔軟性が制限されます。これにより、追加の開発が必要となったり、別のソリューションを検討しなければならなくなる場合があります。
容量や保存期間が制限される場合がある
クラウドサービスのプランには、ストレージ容量やファイルの保存期間に制限が設けられている場合があります。無料プランや低価格プランでは、使用可能な容量が少なく、長期間のデータ保存ができない場合が多いです。
大量のデータを扱う企業や、情報を長期間保存する必要がある場合は、ニーズに合致したプランを選択し、場合によってはプランの見直しも検討しなければなりません。
ファイル管理が面倒な可能性もある
大規模プロジェクトのような、多数のユーザーがクラウド上で多くのファイルをアップロードする環境では、管理が複雑になることがあります。ファイルのバージョン管理やアクセス権の設定、重複ファイルの削除などを頻繁に行う必要があるためです。
ファイル管理の手間を減らすには、ファイルの命名規則やフォルダ構造を事前に計画することが大切です。
クラウドストレージの選び方
クラウドストレージは、組織のニーズに合わせて適切なサービスを選ぶことが大切です。
以下では、クラウドストレージを選ぶ際に考慮すべきポイントを解説していきます。
コストを抑えられるか
クラウドストレージの選定において、コストパフォーマンスを比較することは非常に重要です。無料プランから高額なプランまで幅広い選択肢があるため、自社の具体的なニーズに合わせたサービスを選ぶことが大切です。
一般的に無料プランは、ユーザー数や使用可能な容量に制限があり、個人ユーザーや短期の試用に適しています。一方で、有料プランは大容量ストレージや豊富な追加機能を備えているので、ビジネス用途に最適です。
データ容量やユーザー数が豊富か
利用できるデータ容量やユーザー数を確認することも、クラウドストレージを選ぶ際には必要です。自社で必要なデータ量やユーザー数に合わせて、最適なプランを選びましょう。
特に大規模企業では、多数のユーザーが同時にアクセスすることが予想されるため、ユーザー数無制限のプランが適しています。
十分なフォルダ分けができるか
クラウドストレージの操作性は、効率的なファイル管理に直結します。
フォルダ階層作成機能やタグ付け機能、細かい権限設定などが充実していているかどうか、そして操作しやすいインターフェースを備えているかを確認することが重要です。操作性が高く、ファイル管理がしやすいクラウドストレージを選ぶことで、作業効率を大幅に向上させることができます。
セキュリティ機能は充実しているか
クラウドストレージの利用において、充実したセキュリティ機能は必須です。データ暗号化や二段階認証といった基本的なセキュリティ機能に加えて、高度なセキュリティオプションが備わっているかを確認しましょう。
また、外部からの脅威だけでなく、内部リスクを軽減するためのログ監視システムなども必要です。
さらに、過去に情報漏洩事故などを起こしていないかも確認しておきましょう。過去の実績は、サービスの安全性を判断する上で重要です。
サポート体制は整っているか
サポート体制の品質は、クラウドストレージの選定において重要な判断基準の一つです。サポート体制が整っているかを評価するには、以下の点を確認しましょう。
- 24時間サポート:いつでも問い合わせが可能か。
- チャットサポート:緊急時にリアルタイムで対応が得られるか。
- 迅速な対応:問い合わせに対してどれだけ早く返答があるか。
- 多言語対応:サポートが複数言語で提供されているか。
- 専門的なサポートチーム:複雑な問題に対処できる専門スタッフがいるか。
複数のデバイスでも利用ができるか
クラウドストレージの利便性は、利用できる端末の種類が多いほど高まります。特に、移動中や出張先でスマートフォンやタブレットからアクセスし、データの閲覧や編集が行えるかどうかは、作業効率に大きく影響します。
そのため、クラウドストレージを携帯端末で利用するためのモバイルアプリが提供されているか、そのアプリは直感的で使いやすいか、また異なるOS間での互換性があるかといったポイントを比較することが重要です。
おすすめのクラウドストレージ6選を比較|無料プラン・個人向け有り!
クラウドストレージサービスは、それぞれに異なる特徴があり、ニーズに適応したサービスを選ぶことが大切です。
以下では、無料プランや個人向けのものを含め、おすすめのクラウドストレージを6つ紹介しますので、参考にしてください。
Google Drive
Google Driveは、その使いやすさと優れた統合性で多くのユーザーに高く評価されています。Googleアカウントがあれば誰でも15GBの無料ストレージが利用可能で、Google DocsやGoogle SheetsなどのGoogle Workspaceアプリケーションとシームレスに連携し、文書の作成や共有を手軽に行えます。
また、共有リンクを使って他のユーザーと簡単にファイルを共有できるため、チーム作業もスムーズです。
プラン名 | ストレージ容量 | 料金(月額) |
無料プラン | 15GB | 無料 |
Google Oneベーシック | 100GB | ¥250 |
Google Oneスタンダード | 200GB | ¥380 |
Google Oneプレミアム | 2TB | ¥1,300 |
個人向けのクラウド ストレージおよびファイル共有プラットフォーム – Google
※本記事に記載している会社名やサービス名は、各社の商標または登録商標です。
iCloud
iCloudは、Apple製品のユーザーにとってはおすすめのサービスです。Appleのエコシステムに深く統合されており、iPhone、iPad、Mac間でのデータ同期をスムーズに行うことができます。無料プランで提供される5GBのストレージは、写真、動画、ドキュメントのバックアップと同期に便利です。
また、iCloud Driveを使うと、デスクトップやドキュメントフォルダをクラウドにバックアップし、どのデバイスからもアクセス可能です。
iCloud+プランでは、追加のストレージと機能が提供され、さらに柔軟な使用が可能になります。
プラン名 | ストレージ容量 | 料金(月額) |
無料プラン | 5GB | 無料 |
iCloud+ | 50GB | ¥130 |
iCloud+ | 200GB | ¥400 |
iCloud+ | 2TB | ¥1,300 |
iCloud+ | 6TB | ¥3,900 |
iCloud+ | 12TB | ¥7,900 |
※本記事に記載している会社名やサービス名は、各社の商標または登録商標です。
Dropbox Business
Dropboxは、長年にわたりクラウドストレージ市場をリードしており、そのシンプルさと信頼性で広く認識されています。ビジネスユーザー向けに特化したDropbox Businessは、チームのコラボレーションを強化する多様な機能を提供し、ビジネスシーンでの利用に最適です。
多様なデバイス間で迅速かつ確実なファイル同期ができるため、チーム内でのリアルタイムな共同作業を可能にします。
また、SlackやZoomといった他のアプリケーションとの連携も充実しており、業務効率の向上に寄与します。
プラン名 | ストレージ容量 | 月額料金 |
Essentials | 3TB | ¥2,000 |
Business | 9TB以上(チーム全体) | ¥1,500/1ユーザー |
Business Plus | 15TB以上(チーム全体) | ¥2,400/1ユーザー |
Enterprise | カスタマイズ可能 | お問い合わせ |
※本記事に記載している会社名やサービス名は、各社の商標または登録商標です。
Box
Boxは企業向けクラウドストレージとして高く評価されており、特に大規模な組織での利用に適しています。10GBの無料プランもあり、個人ユーザーには十分な利用が可能です。ビジネスプランではさらに多くのストレージ容量と高度なセキュリティ機能が利用できます。
堅牢なセキュリティ機能とコンプライアンス対応が特徴で、医療や金融といったデータ保護が重要な業界でも安心して使用可能です。
また、SalesforceやMicrosoft 365などのビジネスアプリケーションとの連携を通じて、業務プロセスの効率化も図れます。
プラン名 | ストレージ容量 | 料金(月額) |
無料プラン | 10GB | 無料 |
Business Starter | 100GB | ¥636.9 |
Business | 無制限 | ¥2,084.5/ユーザー |
Business Plus | 無制限 | ¥3,473.8/ユーザー |
Box — セキュアなクラウドコンテンツ管理、ワークフロー、コラボレーション
※本記事に記載している会社名やサービス名は、各社の商標または登録商標です。
Box/Box over VPN
Box over VPNは、NTTコミュニケーションズの閉域網を利用し、企業内部ネットワークを介してBoxにアクセスするためのソリューションです。企業の既存のセキュリティインフラを活用し、VPNを通じてデータの送受信を暗号化することで、外部からの不正アクセスを防ぎます。
また、Box over VPNは全プランで容量無制限のストレージを提供しており、大規模なデータを扱う企業にとって非常に有効な選択肢です。さらに、「Box Zones Japan over VPN」オプションを選択することで、データは日本国内のデータセンターに限定して保存され、国内法規制に準拠したデータ管理が可能となります。
プラン名 | ストレージ容量 | 料金(月額) |
Business | 無制限 | ¥2,600 |
Business Plus | 無制限 | ¥3,800 |
Enterprise | 無制限 | ¥5,000 |
Box over VPN|ドコモビジネス|NTTコミュニケーションズ 法人のお客さま
※本記事に記載している会社名やサービス名は、各社の商標または登録商標です。
OneDrive for Business
OneDrive for Businessは、Microsoftが企業や組織向けに提供するクラウドストレージサービスです。特にMicrosoft 365との統合性が高く、Word、Excel、PowerPointなどのOfficeアプリケーションとシームレスに連携します。ユーザーはアプリケーション内で直接ファイルを保存、編集、または共有することができるので、作業効率が格段に向上します。さらに、Microsoft TeamsやSharePointと連携することで、チームでの共同作業をスムーズに進めることが可能です。
プラン名 | ストレージ容量 | 月額料金 |
OneDrive for Business (Plan 1) | 1 TB | ¥749/ユーザー |
Microsoft 365 Business Basic | 1 TB | ¥899/ユーザー |
Microsoft 365 Business Standard | 1 TB | ¥1,874/ユーザー |
Microsoft OneDrive クラウド ストレージとファイル共有 | Microsoft 365
※本記事に記載している会社名やサービス名は、各社の商標または登録商標です。
まとめ
クラウドストレージでExcelファイルを共有することは、データ量が増大する現代において非常に有効な手段です。
しかし、メリットだけでなく注意すべき課題も存在します。それらを理解し、適切なサービスを選ぶことで、業務効率を向上させる最適なツールとなります。
本記事で紹介したクラウドストレージの選び方やおすすめのサービスを参考にして、自社に最適なサービスを検討してみてください。