DXを加速させるファイルサーバの「クラウドシフト」、安心・便利な“移行”に必要なことは?

公開日:
2021.12.01
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最終更新日:
2021.12.01
コロナ禍によるリモートワークの増加にともなって、企業におけるファイル管理・共有の最適な仕組みのあり方も変化してきた。社内にファイルサーバやNAS(Network Attached Storage)を設置して管理するオンプレミスからクラウドへとシフトしつつあるのだ。しかしクラウドへの移行にはセキュリティ面での懸念やデータや運用の引き継ぎ作業の煩雑さなどの課題がある。効率的でなおかつ安全なクラウドでのファイル管理・共有への移行方法とDX推進との関係性について解説していく。

コロナ禍下で分散・乱立しているファイルサーバをいかに集約してクラウドストレージへ移行すべきかが問われている
(Photo/Getty Images)

安全性・運用を維持してクラウドストレージへ移行する方法

働き方改革の進行や新型コロナウイルス感染症の拡大によって在宅勤務が推奨され、リモートワークが急増した。そうした働き方の変化によって、社内サーバやNASを設置して自社内で情報を管理するオンプレミスからクラウドへの移行を進める企業も増えつつある。

しかしクラウドでのファイル管理は「いつでもどこからでもアクセスできる」利便性の高さがある一方、セキュリティの確保が難しくなるという課題も出てきている。これまでオンプレミスで運用していた自社のシステムの仕組みを生かして、そのままクラウド上で継承・活用したいというニーズもあるだろう。

 機密性の高いデータ管理はオンプレミスを使用、機密性の低いデータは利便性の高いクラウドを活用し、オンプレミスの良さとクラウドの良さをうまく組み合わせて、ハイブリッドでの運用を考えている企業も少なくないが、結果的に情報の分散と管理者・ユーザーともに併用による非効率から負荷が増えるという課題がある。クラウドへのシフトを進める上でポイントとなるのは、いかにしてこれまでの運用を変えずに、つまり「痛みを最小限に抑えて」移行しつつ、クラウドのメリットを享受できるかということになるだろう。

社内に分散・乱立しているファイルサーバをいかに集約してクラウドストレージへ移行していくべきなのか。オンプレミスの運用は継承させつつコストを削減しながら、どのようにして効率化を図っていくべきなのか。また、安全性を維持しながら、効率化を実現するクラウドシフトについて、実現している企業の事例も交えて解説する。

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・オンプレミスからクラウドへのファイルサーバ移行における課題
・クラウドファーストの時代に対応したインターフェース
・ニーズに合わせた柔軟なクラウドストレージサービスの活用事例

オンプレミスからクラウドへのファイルサーバ移行における課題

ファイルフォース
マーケティングマネージャー
佐々木 裕子氏

 従来のファイルサーバをオンプレミスからクラウドへとシフトを考えている企業は少なくないだろう。テレワークの増加によって、社外とのファイル共有の機会が増えているため、クラウドストレージで運用することのアドバンテージが大きくなっているからだ。

 しかし思うようにクラウドシフトが進んでいないケースが目につく。高機能なクラウドストレージサービスを提供しているファイルフォースのマーケティングマネージャーの佐々木 裕子氏はクラウドへシフトする上での課題と克服方法についてこう説明する。

 「国内の企業でもクラウドファーストという考え方が普及しました。しかし、一般的なクラウドストレージでは従来のファイルサーバの運用が継承できない、アクセス権限が数パターンしかなく、全社のファイルサーバとしての導入が難しいといった状況があります。その結果、ファイルサーバとクラウドストレージの併用や、部門それぞれが別のクラウドサービスを導入してしまい、ガバナンスが徹底できず、情報分散してしまうなどの新たな課題が発生しているのが現状です」(佐々木氏)

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ファイルサーバとクラウドストレージの課題の解決

クラウドファーストの時代に対応したインターフェース

 ファイルフォースではユーザーがクラウドへとシフトした際、システムが変更してもストレスなく使えるように、2つのユーザーインターフェースが提供されている。Windowsのローカルディスクのように活用できる「Fileforce® Drive」と、ブラウザでログインして使用する「Web UI」である。この2つの仕組みを採用しているメリットについて、佐々木氏はこう語っている。

 「導入したツールによって運用が大きく変わることはストレスとなります。SaaSサービスの中にはユーザーがツールに合わせて運用を変えなくてはならない、もしくはITリテラシーの有無に頼らざるを得ないものもありますが、ファイルフォースはこれまでのファイルサーバの使い勝手ときわめて近く、クラウドであることを忘れる軽快な操作性を実現しました。ローカルドライブのようにマウントしてエクスプローラーから直接ファイルにアクセスできるFileforce® DriveとブラウザからアクセスできるWeb UIがあり、どちらもトレーニング不要で直感的に扱えます」(佐々木氏)

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使い方やアクセス制限はそのままの2つのインターフェース

 「Fileforce® Drive」と「Web UI」においては、フォルダの構成やアクセス権限を従来のファイルサーバやNASでの運用から継承することができるために、スムーズな移行が可能になるとのこと。ユーザーにとってはこのインターフェースは大きなアドバンテージになるだろう。

ニーズに合わせた柔軟なクラウドストレージサービス

 顧客となる企業のニーズに合わせて、柔軟なクラウドストレージサービスを提供しているところに、ファイルフォースのサービスの特徴がある。2021年4月からスタートしたNTT東日本のコワークストレージというストレージサービスでもファイルフォースの要素技術が採用されている。ファイルフォースが提供するユーザーインターフェースやアプリケーションに加え、テレワーク導入などで関心が高まっているセキュリティ面でもNTT東日本の持っている回線認証といったインフラのセキュリティの高さが存分に生かされているのだ。

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NTT東日本の新サービス、コワークストレージの事例

 NTT東日本の新サービスであるコワークストレージの仕組みと事例について、佐々木氏はこう説明する。

「NTT東日本のコワークストレージというモデルではエンドポイントセキュリティへの対応の一環で通常のインターネットからの接続を不可にすることができます。フレッツ光の回線 IDを基にして認証することでオフィスネットワークとリモートワーク中の社員の自宅ネットワークを特定し、つなげる仕組みです。NTT東日本の持っているインフラやシステムを活用することでさらにセキュリティを向上させ、独自のサービスを展開しているのです。将来的にはデータアクセス時にも、プロセス認可の機能によって未認可プロセスによるファイルアクセスを防止する仕組みも検討しています」(佐々木氏)

クラウドストレージを使った2種類の共有方法

 ファイルフォースの提供するクラウドストレージサービスの大きな特徴は、ガバナンスやコンプライアンス遵守に対応できる情報システム部よる中央集中管理を可能としながらも、ユーザーは社内外と効率的で、柔軟なコラボレーションが可能である点にある。これまでファイルの共有手段としてPPAP(zip形式で圧縮、暗号化したファイルをメール添付にて送信した後、パスワードを別送すること)が一般的だった。

 しかし手間がかかるわりに安全性はそれほど高くない、受け取り手側がセキュリティのチェックが難しいなどのデメリットがあり、PPAPに代わる新しい共有方法として、クラウドストレージが注目されるようになってきた。ファイルフォースではクラウドストレージでの2つの共有方法を提供していると佐々木氏は説明する。

「ファイルフォースらは2種類の共有方法があります。1つ目は共有用URLを発行する共有リンク機能です。2つ目は特定のフォルダを指定して社内外のメンバーを招待し、フォルダごとに安全に共有するプロジェクトフォルダ機能。限られたメンバーとファイルを共有したい場合や、ファイルフォース・アカウントを持っていないユーザーとのファイルのやり取りをする場合に大変便利です。ファイルフォースでは通信上の暗号化はもちろん、ファイルがアップロードされた時点でもウイルスチェックと暗号化をしているので、安心して使えます」(佐々木氏)

 ファイルフォースのプロジェクトフォルダを活用した事例として国内大手製薬会社の治験プロジェクトが挙げられる。コロナ禍の影響で医療機関への訪問が難しくなる状況の中で、臨床試験の治験プロセスにおける被治験者の情報の確認などの業務がプロジェクトフォルダを活用することでオンライン上で行われたのだ。

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国内大手製薬会社によるプロジェクトフォルダ活用例

 医療データの取り扱いには万全の注意が必要となる。佐々木氏は大手製薬会社でのプロジェクトフォルダの具体的な活用方法についてこう説明する。

「臨床試験の治験プロセスにおいては、製薬会社が医療機関を訪問して被治験者の情報を確認する業務があります。しかし2020年春からのコロナ禍の中での医療機関への訪問ができなくなり、スケジュールにも影響を及ぼす懸念がありました。そこでクラウドストレージ経由でプロジェクトフォルダとともに、医療機関ごとのフォルダも作成。医療機関の担当者をメールアドレスで紹介し、電子化されたファイルをクラウドにアップロードしてもらい、製薬会社はデータ改変のできない参照権限のみを持ち、内容の確認業務を遂行していただきました」(佐々木氏)

 これらすべてのアクティビティを証跡やログに残すことで、業界が要求する規制や高いセキュリティ基準を保ちながら、リモートで完結する新しい働き方を実現できたという。

 その他にも自社で契約しているクラウドのストレージを活用するBYOS(BringYourOwnStorage)モデルの提供など、企業のニーズに合わせたクラウドストレージサービスを実現しているところに、ファイルフォースの独自性があるといえるだろう。BYOSモデルは、Fileforce®のインターフェースを使いながらも、データの最終保管先ストレージはユーザー企業が契約するAWS上のストレージとなる。実際にこの提供モデルは鹿島建設におけるDX推進に向けた「データマネジメント基盤」でも現場からのIoT機器データやノウハウ集約とデータ活用の仕組みとして採用されている。佐々木氏のこんな言葉が印象的だ。

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Fileforce® BYOS(BringYourOwnStorage)モデル 鹿島建設事例

 「ファイルフォースを使うことで、SaaSにありがちな無理な運用変更などのペイン(痛み)を感じずにクラウドシフトによるDXを実現していただけます。BYOSモデルのような他にはない柔軟な提供モデルも用意していますので、ファイルサーバのように使い方や運用保守のニーズが汎用化しやすいツールはSaaSを活用することで、負荷の高かった保守や維持管理からIT人材のリソースを解放し、自社でしかできないさまざまなDX計画や業務改革に充てていただくことで、企業のDX推進にお役に立てるのではないかと考えています。また、脱PPAPの安全なファイル共有やリモートワーク時の社外からのアクセスなど、クラウドストレージだからこそのメリットもあり、業務効率化にも貢献できます」(佐々木氏)

 ファイル管理・共有の方法をクラウドへとシフトする際に、それまで企業が持っていた運用ルールやポリシーをすべて捨ててしまうのはもったいない。これまでにファイルサーバ運用で蓄積された自社のファイル管理・共有の知見を活用しながら、新しい時代に対応したシステムを構築することは可能であると、ファイルフォースのサービスが示している。