テレワークは場所にとらわれない柔軟な働き方を実現できますが、オフィスとは大きく環境が変わるため、導入までの流れを知っておくことが重要です。テレワークの採用を検討している企業向けに、導入までのステップと注意すべきポイントを解説します。
テレワークってそもそも何?
テレワークとはもともと「tele(離れた場所)」と「work(働く)」を組み合わせた造語であり、情報通信技術を活用し、オフィス以外で時間や場所にとらわれずに自由に働くことを指します。オフィス以外の図書館やワーキングスペースなどで働くことも当てはまります。
場所にとらわれない柔軟な働き方
新型コロナウイルスの影響で在宅勤務を導入する企業が増加している影響で、自宅で働くことをテレワークと呼んでいるケースも少なくありません。 しかし、本来のテレワークは場所や時間にとらわれない柔軟な働き方を指します。自宅はもちろん、サテライトオフィスやテレワークセンターといった施設を利用したり、ホテルの部屋やカフェなどで仕事をしたりすることもテレワークにあたります。
テレワーク導入率はどれくらい?
現在、日本でのテレワーク導入率はどれくらいでしょうか?新型コロナウイルスの影響によって、これまで導入する予定のなかった企業もテレワークを採用するケースが増えています。
2020年の導入率は50%以上
東京都が実施した「テレワーク導入調査結果」によると、都内企業のテレワーク導入率は57.8%となっており、前回(2019年)の2倍以上に増えています。もともと大企業の導入率が高かったテレワークですが、新型コロナウイルスの影響で中小企業での導入も急増しているようです。 さらにテレワークのような働き方を今後も維持・拡大したいと考えている企業は約80%となっており、自宅を含むオフィス以外の場所で働く人はさらに増え続けるでしょう。 ※出典:東京都「テレワーク導入実態調査」
テレワーク導入までのステップ
では、企業が新しくテレワークを導入する流れを具体的に解説します。
導入の検討と経営判断
テレワークを新規に導入する場合、まず目的を明確にする必要があります。最終的にどういう結果を得たいのかを明確にし、全社的に目的意識を共有することが重要です。 新型コロナウイルスの影響でやむを得ずテレワークを導入した企業も少なくありませんが、社員がオフィス以外で働くメリットを理解し、企業として成し遂げたいことを明確にしましょう。
導入後の課題を洗い出す
自社の現在の体制や労働環境を見直し、テレワーク導入後に起こりうる課題を洗い出しましょう。社員の労働生産性の向上や経費削減などのメリットが期待できますが、一方で労務管理の難しさや社員同士のコミュニケーション不足、情報漏えいなどのセキュリティリスクも考慮しなければなりません。 事実、東京商工リサーチの調査によると、新型コロナウイルスの影響でテレワークを導入した企業のうち、およそ26%の企業が導入を中止しているようです。導入前に起こりうる課題を想定し、対策を立てておくことが重要です。 ※出典:東京商工リサーチ「第6回『新型コロナウイルスに関するアンケート』調査」
導入後の体制作りを想定する
テレワークと言ってもいくつかの体制があり、企業によって最適なものは変わってきます。代表的な体制は次の4パターンで、導入前にどの体制にするかを想定しておく必要があります。
- フルタイム型:社員が自宅をはじめとしたオフィス以外でフルタイム勤務をする体制
- ハイブリッド型:オフィスに通勤しての仕事とオフィス以外での仕事を両立する体制
- 外部委託型:テレワークする業務を外部委託する体制
- テンポラリー型:一時的に発生した業務だけをオフィス以外の場所で体制(※突発的に発生した業務を在宅で行うなど)
自社の状況や人的リソースを勘案し、最適な体制を選択しましょう。導入後の状況に合わせて上記の体制を使い分けるのも有効です。
社内ルールを構築する
セキュリティ対策を含む社内ルールを構築し、テレワークに従事する社員に順守させる必要があります。 特に社外からのアクセス経路やマルウェア対策など、セキュリティに関するレギュレーションは必ず設定しておきましょう。また、日々の業務報告やスケジュール調整など、チャットツールや業務管理ツールを活用しながらスムーズに業務を進められるようにルール化しておくことも重要です。
社員のインターネット環境をチェックする
社員がテレワークで利用するインターネット環境のチェックも重要です。在宅で仕事をする場合は固定回線を利用する人が多いですが、自宅以外の場所で仕事をする場合にはモバイルWi-Fiなどを導入しなければなりません。 公共の無線LANはセキュリティレベルが低く、情報が盗み出される可能性があるので、原則としてテレワークでは使用しないようにしましょう。 人によっては自宅に回線を引いていないケースもあるので、企業が負担して回線を準備するのか、あるいはモバイルWi-Fiを貸し出すのかなど、インターネット環境の整備に関しては必ず事前に取り決めをしておく必要があります。
セキュリティ対策を万全にする
上述のように、テレワーク環境でのセキュリティ対策は万全にしておかなくてはなりません。例えば社内で使っていたパソコンや記録媒体などを社外に持ち出す場合は、紛失や盗難の可能性を考える必要があります。社外で利用することで、パソコンがマルウェアに感染してしまうリスクも高まるでしょう。 基本的なセキュリティ対策を含め、各々の社員がテレワークで守るべきことをルール化しておくことが重要です。具体的な順守事項の設定に関しては、総務省の発行している「テレワークセキュリティガイドライン」が役立ちます。こちらを参考にしてください。 ※参考:総務省「テレワークセキュリティガイドライン第4版」
テレワーク導入後の評価方法
テレワークは導入して終わりではなく、継続的に導入効果を測定し、評価する必要があります。最後にテレワークの効果測定方法を簡単に説明しておきます。
定量的評価
社員の日常的な働きぶりを確認しづらいテレワークでは、どの職種でも業務の成果を数値に落とし込む工夫が必要です。具体的には各々の社員がどういう分野でチームに貢献するのかを明確にし、KPIを設定しましょう。KPIとは組織全体の達成目標に対する達成度合いを評価する指標です。 社員が自らの業務においてKPIを設定することで、どの程度組織目標の達成に貢献したかが分かるようになります。例えばテレワーク中の顧客獲得件数や伝票の処理件数、問い合わせの処理件数などは数値化しやすく、チームで設定した目標の達成度合いが分かりやすいです。 他にもテレワークで活用可能なさまざまな指標があるので、自社で定量評価の方法を工夫してみましょう。
定性的評価
業務によっては具体的に数値で成果を測りづらいケースも多く、社員同士の評価やアンケートなどの定性評価によって効果を測定する必要があります。テレワークでは各社員に聞き取り調査を行って、日々のコミュニケーションや業務内容に関する満足度を確認している企業が多いようです。 特に、Web会議ツールなどを活用して、定期的に上司と部下が1対1で話し合いや相談を行う1on1によって評価を行う企業が増えています。テレワークでは社員同士の関係が希薄になってしまいがちなので、コミュニケーションを活性化する意味でも、こういった施策は役立ちます。
まとめ
テレワークの概要と、導入までの具体的なステップを解説しました。オフィスでの業務と環境が全く違うため、これからテレワークを導入する企業は具体的な流れを知っておく必要があります。 事前に導入目的を明らかにした上で、セキュリティの面も含めて導入後に想定される課題の対策をしておくことが重要です。総務省のガイドラインなどを参考に、社員が順守すべきルールをしっかりと定めておきましょう。