テレワークの導入を検討するにあたり、不安を感じている担当者も多いでしょう。うまくいくことばかりではなく、課題が頻発する可能性もあります。万全な対策を講じるために、テレワークのメリットとデメリットを理解しておきましょう。
テレワークの意味とは?
新しい働き方として注目を集めているテレワークとは、どのような働き方を意味するのでしょうか。注目されるようになった背景についても解説します。
場所や時間にとらわれない働き方のこと
テレワークは、『tele(離れた場所)』と『work(働く)』を組み合わせた造語です。情報通信技術(ICT)を活用した、時間や場所にとらわれない柔軟な働き方を指します。 企業でテレワークを導入する場合は、本社オフィスを拠点とし、従業員が離れた場所で働く形態が一般的です。 テレワークの主な形態は、自宅で作業に取り組む在宅勤務、サテライトオフィスなどで働く施設利用型、場所を選ばないモバイルワークの三つに大きく分けられます。 研究・開発に携わる人や、総務・人事・経理などのバックオフィス部門で働く人は、テレワークに向くでしょう。特別な事情により通勤が困難な人にも適した働き方です。
テレワークが注目される背景
労働環境を大きく見直す取り組みとして、一億総活躍社会の実現に向けた『働き方改革』が政府の重要政策の一つに位置付けられています。 少子高齢化社会での労働者の確保・ワークライフバランスの実現・地域活性化などを目標とする働き方改革において、切り札として注目されているのがテレワークです。 テレワークは、企業のみならず就業者や社会を含めた3方向に、多くの効果を生みだす働き方として期待されています。 総務省では、関係省庁とも連携を図りながら、テレワークの普及促進に関するさまざまな取り組みを進めています。
テレワークを導入するメリットとは?
テレワークを導入すると、企業と従業員の双方にさまざまなメリットをもたらします。代表的なメリットを確認しておきましょう。
業務効率化
テレワークでは、会社に勤務する従業員と、会社以外で作業する従業員との間で、業務を分担するのが基本です。 テレワーク導入を機に社内業務を全て洗い出し、社外へ持ち出しても業務効率が落ちない仕事をテレワーク勤務者に任せることで、業務全体が再構築され、企業の業務効率化につなげられます。 また、テレワークの環境作りにおいて、ITツールを導入したシステムの構築は欠かせない作業です。 テレワークで利用するITツールには、業務効率化を図れるものも数多くあります。勤怠管理システムやWeb会議システムなどを活用すれば、企業全体の業務効率化につながるでしょう。
コストの削減
テレワークを導入すると、オフィスへの勤務者が減るため、企業が交通費を負担している場合は通勤手当を削減できます。 オフィスコストを減らせることもメリットです。コピー代・消耗品代・光熱費などのほか、テレワーク勤務者の数によっては賃料を削減できる場合もあるでしょう。 テレワーク導入により、採用費を削減できる可能性もあります。何らかの事情により通勤できなくなった従業員も、テレワーク勤務者として雇用し続けられるため、再雇用にかかるコストが発生しません。 このように、テレワークを進めることで、企業側のさまざまなコストを削減できます。
優秀な人材を発掘
どんなに優秀な人材を発掘できても、その人が通勤できる範囲に住んでいなければ採用できません。 しかし、テレワークを導入して人材を探す場合は、国内のみならず世界中に募集範囲を広げられます。 人材の発掘だけでなく、優秀な人材の流出を防げることも、テレワークのメリットです。ライフスタイルの変化などで通勤できなくなった従業員がいても、テレワークを導入していれば引き止められる可能性があります。 また、家事や育児で一時的に仕事の一線から離れていた人にも、テレワークの導入を機に復帰を打診できるでしょう。
営業効率化
営業部署をテレワーク化し、従業員が自宅から直接営業回りへ行けるようにすることで、オフィスに顔を出すための時間を削減できます。 通勤時間をカットできれば、商談の準備に時間をかけたり、より多くの訪問先に足を運んだりできるため、効率よく営業活動を行えるでしょう。 モバイルワークのシステムを整えることで、営業先や遠方の出張先からもオフィス業務に携われるため、自宅やサテライトオフィスに立ち寄る手間も省けます。 営業活動を効率化するためには、移動時間の削減が大きなポイントです。テレワーク化により、物理的な活動拠点をなくせるため、よりフレキシブルな営業が可能になります。
通勤ストレスの解消
オフィスに通勤しなければならない人の多くは、通勤自体に何らかのストレスを感じています。 自宅から時間をかけて通勤している場合、移動時間がもったいないと思うこともあるでしょう。毎朝満員電車に乗っている人は、人ごみの中で身動きが取れないことにストレスを感じがちです。通勤時に肉体的な疲労を感じる人も多いでしょう。 しかし、在宅勤務を導入すれば、従業員はこれらのストレスから解放されます。時間的・精神的・肉体的な負担から解放されると、仕事もはかどりやすくなるでしょう。 在宅勤務で通勤がなくなると、通勤準備にかかる時間やストレスから解放されることもメリットです。
ワークライフバランスの向上
『ワークライフバランス』とは、仕事と生活の調和を意味する言葉です。仕事だけでなく、仕事以外の時間も充実してこそ、人生が充実するという考え方を表しています。 テレワークの導入により、仕事以外の時間が増えると、よりプライベートが充実するでしょう。在宅勤務で子育てや介護をしやすくなることも、仕事と生活の調和につながります。 また、ワークライフバランスが向上すると、従業員のモチベーションがアップしやすくなるため、業務効率化や生産性向上を期待できます。自由な時間が増えることで、資格取得などのキャリアアップを図る従業員もいるでしょう。 このように、ワークライフバランスの向上は、従業員と企業の双方にメリットをもたらします。
テレワークを導入するデメリットとは?
単に「良さそうだ」という理由だけでテレワークを導入すると、運用を進めていくうちに問題が起こりやすくなるでしょう。主なデメリットを知り、事前に対策を練っておくことが重要です。
コミュニケーションが取りにくい
同じ職場で仕事をしている場合、相手と対面しながら話せるため、意思の疎通を図りやすくなります。仕草や表情から読み取れる情報も多いでしょう。 しかし、メールやチャットなど文字でのやり取りが多いテレワークは、伝わる情報が最小限になりがちです。意図がうまく伝わらなかったり、誤解を招いたりすることもあるでしょう。 相手の様子が分かりにくいため、話しかけるのをためらってしまうことも、コミュニケーション不足につながります。 情報の伝達がうまくいかなければ、業務効率が悪くなってしまうこともデメリットです。テレワークを導入する際は、コミュニケーション不足への対策を練る必要があります。
社員のモチベーション維持が難しい
社員によっては、テレワークを導入することで、モチベーションが下がってしまう可能性があります。 職場に出勤して仕事をする場合、多くの人はオンとオフを切り替えるでしょう。しかし、職場に行かないことで気持ちの切り替えができない人は、なかなかやる気を出せません。 作業以外のことに気を取られやすく、集中力を維持しにくいこともデメリットです。上司や同僚の視線が気にならないため、仕事中でもついほかのことに手を出してしまいます。 1人での作業に慣れない人も、モチベーション維持が難しいでしょう。上司に相談したり同僚から刺激を受けたりできず、やる気がでないまま過ごしてしまいます。
従業員のネット環境が整ってない
テレワーク従業員は、自分が働く場所のネット環境を整える必要があります。自宅にネット環境が全くない場合、在宅勤務は難しいでしょう。 公共Wi-Fiが使える場所に移動したり、モバイル回線を使ったりする方法もありますが、通信が安定せず満足に作業できなくなる可能性があります。 Web会議を実施する機会が多い企業なら、在宅勤務する従業員の自宅には、インターネットの固定回線が必須といえるでしょう。 自宅の固定回線の導入・維持費を一定割合負担したり、無線のモバイルWi-Fiを従業員に無償で貸し出したりしている企業もあります。
セキュリティに問題がある
テレワークの導入において、セキュリティ対策は大きな課題の一つです。インターネットを利用する場合、悪意のあるソフトウェアにより、端末やサーバーがウイルス感染するリスクがあります。 ネットワーク経由で不正アクセスを受けると、機密情報や個人情報などの重要なデータが漏えいする恐れもあります。社外に端末を持ち出す場合は、盗難や紛失にも備えなければなりません。 何も対策をせずにテレワークを開始すると、これらのセキュリティリスクに無防備でさらされることになります。 セキュリティ対策のルールを策定したり、ツールを導入して技術的な対策を施したりする必要があるでしょう。
チームワークの課題
それぞれの従業員が離れて作業するテレワークでは、仲間意識や連帯感が低下しやすいため、チームワークを維持しにくいというデメリットがあります。 特に、チームを組んでプロジェクトを進めることが多い企業では、チーム意識の低下により、十分なパフォーマンスを発揮できなくなるでしょう。 チームワークの課題を克服するためには、コミュニケーションツールを導入して交流の活性化を図ったり、仲間意識を下げないような機会を会社主導で設けたりすることが重要です。
テレワークツール導入でデメリットを改善
テレワークを導入すると、さまざまな問題が発生するでしょう。課題を解消するためには、テレワークに向いたツールの導入が効果的です。
自社に合ったツールの導入を検討する
テレワークで起こり得る問題の中には、従業員の意識改革や企業によるルール策定で解決できるものもあります。 しかし、ネット環境やセキュリティなど、技術的な対策を講じなければ解消できない課題も多いでしょう。 テレワークのデメリットを改善するにあたり、ツールの導入は不可欠です。技術的な問題だけでなく、コミュニケーション不足などの問題も、ツールで解消できる可能性があります。 また、ツールの中には、勤怠管理システムなど、業務効率化につなげられるものもあります。自社の問題点や改善したい点を洗い出し、自社に合ったツールの導入を検討しましょう。
まとめ
テレワークにはメリットとデメリットがあり、テレワークを成功へ導くためには、デメリットの改善に努めることが重要です。問題解決に役立つツールの利用を検討することで、テレワーク導入のハードルを下げられるでしょう。